日本株への投資にためらう最大の原因~なぜGPIFはESG投資を始めたのか~

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日本株はバブル期以来の最高値更新

2018年は上半期に調整が入りましたが、下半期の怒涛の巻き返しで年初来高値どころか、1991年以来の最高値をつけたことが話題になっています。

この記事を書いてる最中も高値を更新しており、為替は1ヶ月前は1ドル110円だったのが昨日ごろから114円台をトライし始め、将来価格を示すオプションの値段も115円をつけています。

しかし、円安が進んで輸出企業を中心とした株高が全体に広がり、、、という流れは一時的には起きるかもしれませんが、長くは続かないと考えています。

前回の記事に続いて日本株の悲観論が続いて恐縮ですが、その前提として日本株上昇のもろさがあるからです。

強気相場は幸福の中で消えていく、人の行く裏に道あり花の山、友なき方へ行くべし、相場師は孤独を愛すという言葉もありますが、個人的には日本株の危うさを別のところに感じています。

日本株の大口投資家、クジラと呼ばれるGPIFの存在です。

日本株上昇の背景にGPIFの買いオペ

現在、政府はアベノミクスという名目でGPIFの25%の上限目一杯、日本株を買っています。

私はそれ自体が問題だとは思いません。

たしかに公的性の強い資金を使って、広く中長期的に日本経済を底上げするという意思決定そのものには賛成だからです。

しかし、その結果、1000円以上日経平均が上がっていると聞くとどうでしょうか。

当然ですが、GPIFが買うからもしくは長期安定株主が付くという理由で買っている国内外の投資家もいると思います。

GPIFの主要ファンドはパッシブ(インデックス投資)ですから、よほどの懸念銘柄でなければ広く買われます。

GPIFが買うということは業績によらずにどんな銘柄も大きく買われる結果、それに伴って買っている投資家もいるということです。

またパッシブファンドでもGPIFが採用している最適化法という手法では、以下の観点で完全に時価総額基準になっているわけではありません。

GPIFによるパッシブファンドの運用ルール

・信用リスク懸念銘柄を排除している

・市場とのトラッキングエラーを最小化(するため、高ベータ銘柄を多く保有する傾向がある)

・銘柄入れ替えや資本異動、ファンドの入出金(年金受給者への給付や現役世代からの納付)を見越して、常に目標ポートフォリオ(TOPIX)から乖離している

・市場平均を上回るリターンが要求される

このようにGPIFのパッシブファンドでの保有比率は時価総額に準じて厳密に保有しているわけではなく、特定の銘柄に色をつけて重み付けされて保有しているので、公平性という観点からは程遠いと言わざるを得ません。

ただ、その結果が奏功したのか昨年の2017年は10兆円を超える運用益を叩き出し、年率6.9%のプラス運用に成功したわけですが、逆にいうと自らの買いによって株高を演出しているということもできるのです。

また年金ファンドというのはどこも遜色ない運用をしているので、GPIFが動けば多くのファンドが追随するものです。

GPIFが買えば同じ銘柄を買うし、アロケーションを変えれば変えます。

年金基金の中には投資理論に詳しくなくアロケーションに失敗したり、単体では吹けば飛んでしまうほどの小さな基金も無数に存在します。

こうした基金の投資方針は”GPIFに従う”、もしくはGPIFの受託先機関投資家に所属している年金コンサルタントに従うことです。

政府はGPIFを動かせば国内の数十兆円規模の公的年金と企業年金に加え、その他機関投資家を委託先とする全ファンドの資金を国内株式に振り向けることができるのです。

なぜGPIFがESGに投資するのか

いつものように前置きが長くなりましたが、それではなぜGPIFがESG投資をするのでしょうか。

ESG投資の詳細については触れませんが、要は社会的に意義のある会社に投資をしましょうというものです。

https://www.nomura.co.jp/terms/english/e/A02021.html

年金財政は国民の大事な資産なので運用益が出ることが重要なのですが、GPIFは日本株のESGファンドに1兆円もの投資をしているに加えて、既存ファンドにおいてもESG投資を心がけるよう、委託先の運用機関に対して指示をしています。

たしかに、女性の社会進出、不正競争防止、 生物多様性や二酸化炭素排出削減など社会的意義のある企業にインセンティブを与えることは大事なことですが、大切な年金資産を運用益ではなく社会的意義のために使うというのはどうも納得できません。

そもそも日本の年金制度は賦課方式を採用しているため、我々現役世代の納付金は将来の自分たちに給付されずに現在の高齢者に回されています。

ただでさえ、人口減少が続いている日本社会において運用益最大化は最優先で取り組んでもらいたいことで、意義や建前で給付金が減額してしまうなどの事態は何としても避けてほしいことです。

https://www.jmac.co.jp/column/opinion/012/yamada_14.html

にも関わらず、まるで『背に腹を変える』かのごとく、あえてESGに投資するのはなぜでしょうか。

極端な例でいうと、男性だけでバリバリ利益を上げている企業と、重役に女性を一定比率起用している平々凡々の企業があった時に、ESG投資単体では後者を重視する投資判断をとる場合もあります。

実はアベノミクスの大号令の下、GPIFは着々と日本株のアロケーション比率を高めた結果、2016年には既にウェイト制約の上限である25%に達してしまっていました。

その上で、低迷していた株価をさらに押し上げるため、2017年に日本株の比率を上げてウェイトを上げたと考えることもできるのです。

こういう推測をすると多少詳しい人は、日本株の売買金額の首位は6~7割を占める外国人投資家で、GPIFは0.5%にも満たないと言われるかもしれません。

確かに超長期投資家と言われるGPIFは売買回転率は高くありません。

しかし、そう単純な話ではないのです。

GPIFの日本株買いは日々の株価に影響を与えることはしていませんが、将来影響を与えないとは言えないからです。

新たな株式投資の口実が欲しかった安部政権

そもそもGPIFによる投資は美人投票です。

上記の通り、GPIFのパッシブファンドは時価総額ウェイト通りに保有する完全法ではなく、TOPIXに対するトラッキングエラーを最小化する最適化法ですので、時価総額の高いものやハイベータから保有比率を高めに設定されます。

そのため、時価総額が高く、ベータが高いものが多くなります。

またGPIFは年に数回の給付金と納付金によって発生する年数回のキャッシュフローと、年に一回だけ起きる大きなインデックスの組み入れ以外では売買をすることはありません。

売買回転率が低いというのはファンドの運用効率を高めますが、大きすぎるファンドや追随する投資家全員が同様の銘柄を多く買い占めるとどうなるでしょうか。

結果的にGPIFに組み入れられた銘柄の流動性が損なわれ、需給は逼迫します。

これが何を意味しているかというと、年金ファンドは株をずっと持ち続けることはなく、団塊世代の退職給付で資金が必要になった際にキャッシュを作る必要があり、その際に株が大きく売られる可能性が高いということを意味します。

これが私が最も恐れる日本株最大の下落要因です。

生産年齢人口が減少し、一人当たりの生産率が低い日本企業で、こうした大口の投資家が一度売りに傾くと市場心理は一気に冷えて相場は大きく下げます。

しかも、最適化法の売買ポートフォリオを作成する際はEFPと呼ばれる先物との交換が行われるので、先物主導で全体的に、かつ、時価総額が大きい銘柄から売られます。

どんなにうまく売買ポートフォリオを作って、市場の流動性を加味して分散計画を作ろうとしても市場に対してインパクトを与えてしまう事は必至です。

そうでないとトラッキングエラーが上昇してしまいますし、最悪、市場リターンを下回ることを許されないパフォーマンス重視のGPIFパッシブファンドにおいて運用成績が悪化してしまう可能性もあります。

これはなんとしも避けなければならない事態です。

結果、市場にインパクトを与えて、日経平均大幅は下落し、市場心理を冷やします。

私はこれを年金の資金ニーズリスクと読んでいますが、アベノミクス終了と同時にGPIFの円株比率のダウンウェイトもそう長くない将来起きると思っています。

重要なのは、こうした動きがGPIFだけでなく、他の年金や大手ファンドでも同様に起きることですし、GPIFのような長期安定株主が不在となれば、それを頼りに株を買っていた外国人投資家や個人投資家も離れていくということなのです。

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パウエル五郎

名前:パウエル五郎 年齢:30代 経歴:サラリーマン時代は赤い銀行で国内外の株式のアナリストやファンドマネージャーなど一貫して株式のトレーディングに携わる。 現在は日本株の個人投資家として独立。2016年にアマゾンを購入してからひたすら買い増し、現在はVTなど世界分散投資も実践。