2019年1月3日、日本がお正月気分で大多数の国民が休んでいる中、それまで半年以上も安定的に110円台で推移していた為替相場が1ドル104円まで急激に円高に振り切れました。
ヘッジファンドなどの短期筋の仕掛け的な円買いが要因とみられていますが、アメリカの中央銀行であるFRBの政策金利の運営方針が変りつつあることも背景に挙げられています。
そもそもFRBは2019年に4回の利上げを予定していると市場ではみられていましたが、最近では利上げどころか利下げ観測まで出ています。
トランプ大統領の影響かわかりませんが、株価が下落し始めていることは事実ですし、実体経済は好調な一方で中期的な経済見通しはそこまで明るくはありません。
翻って日本を見てみると、アメリカが淡々と金融緩和の出口に向かって利上げを進めてきたのとは対象的に、未だ金融緩和を実施しています。
私は、日米の経済政策の違いとFRBの金利政策の変化が今回の円高の背景にあると考えています。
またそこから個人投資家がどのような資産運用をすべきかについても一つの解が得られます。
そもそもなぜアメリカは金融緩和からの脱却をしていたのに、日本では未だ緩和しているのでしょうか。
これは民間銀行にお金を回しても有効な貸出先が見つからない、家計に直接お金を配っても配った金額以上に経済が好転することはなかったことが理由です。
そこで日銀は金融緩和を実施する対象を絞ることで効果的な方法を考えなければならないわけです。
ここら辺の話を簡単にするために、まず最初に一定の属性の人たちにお金を配ることを考えてみます。
お金を配る側、つまり日銀としては配った金額以上に効果を得たいわけですね。
そこでわかりやすい例として保有資金に応じて国民をカテゴライズして、各カテゴリー毎にどんな施策をしようか考えてみます。
少しミクロな観点になりますが、まず上位10%の富裕層に配ってはどうかと考えるわけですね。
しかし、彼らはお金を配らなくてもすでにキャッシュを持っています。
むしろ使い所に困っているくらいで、物を買う元手については困っていません。
彼らにお金を配ってもそのお金を使われることはないでしょう。
そもそもパイが少ないので一人が使える金額は限られてくるので効果として期待できません。
何よりも残りの9割の国民=世論の批判に政権が耐えられないでしょう。
これはボツです。
次に、所得の低い国民の銀行口座に振り込んでみてはどうかと思うわけです。
銀行にばらまかれた金額で家族でレストランに行き、焼き肉でも食べるかもしれません。
その効果ってどのくらいでしょうね。
ちょっと高級な一家族3万円としてそうした世帯がどのくらいいるでしょうか。
レストランのオーナー企業は儲かるでしょうね。
でもそれって、最初に検討した富裕層みたいな人に配るのと対して変わらなくないですか。
しかも、まだ使われるだけマシです。
可処分所得が少ない彼らは銀行に入った瞬間に安心して貯金として溜め込む人も多いかも知れません。
これでは従来の金融緩和で日銀が公定歩合を操作する伝統的金融緩和と大して変わりません。
むしろ金額的な費用対効果を考えると伝統的な金融緩和よりもメリットは限定的です。
では、次に期限付きの商品券を配ってみてはと考えてみます。
多くの人は有効期限が決められると短期的な視座に陥ってしまいます。
例えばそのお金を使ってその日の内に、コンビニでビールや焼き鳥屋にいって消費するでしょう。
短期的な欲求を満たせるのは食費くらいでしょうから。
それも大した金額を使うわけでもないので、先ほど同様購入された店舗のオーナーが少し潤うくらいですね。
二次的、三次的な派生効果は限定的でしょう。
むしろ有効期限切れで使われなくなる金額の方が多いかもしれません。
以上のことから所得で国民をカテゴライズしてキャッシュをばらまくのは効果が限られてしまうことがわかるでしょう。
このような金融緩和はヘリコプターマネーと呼ばれ、アメリカの経済学者であるミルトン・フリードマンによって1969年に提唱された概念です。
マーケットにお金を流通させつつ、公共投資的な色合いを持つ、いわば金融政策と財政政策を併せ持った性格のある経済政策です。
実際、1999年に日本で行われた地域振興券として配られた政策としても実施されていますが、以上のような背景から効果は限定的でした。
所得によってカテゴライズされた国民にお金を配っても効果が限定的とすると、どういう属性の人にお金を配れば良いかを考えなければならなくなりました。
そこで考え出されたのが今回実施している日銀によるETFの買い付けです。
ETFを買うと儲かるのはこうしたETFを作っている側とそれをすでに保有している投資家になります。
これから購入する投資家もリスクプレミアムが低下するため、株価は高くなりますので一見損していそうですが、長期的に見れば値下がりリスクも低下するので得をします。
アメリカの場合は伝統的な金融緩和だけをしていれば国民が銀行にお金を預けずに、リスク資産にお金を回すのでこのような裏技的な(非伝統的な)金融緩和をしてなくても緩和政策が機能したわけで、こうした点に日米の経済構造の違いが出ているわけです。
前回、以下のようなブログを書きましたが、金融教育が施されていないと国の衰退をももたしてしまうわけです。
ちなみに2018年は1兆2,400億円ものETFやJリートが買い支えられています。
当然、こうした買付資金は税金で賄われるか、新規に紙幣を刷ることで賄われています。
どちらの資金で賄われているのかは財政収支からすると大きな違いですが、国民からすれば些細なものです。
いずれの場合でも市場に出回る資金が増える分、「円」の価値は目減りします。
そのため、その間に銀行口座への預金や債券に投資している投資家は実質的に資産が減少していることになるのです。
国民としては何もしなくても実質的に保有している資金が減少したり、自分たちが払っている税金がこうした資金に使われてしまうわけで株を買っていない人は損をしてしまうわけですね。
そして更に一歩引いて考えてみると、国家予算の歳出のうち1%以上を費やしてまで買われている日本株がここまで売られているのは海外の投資家に流れているわけで、こうして売られた金額はアメリカを中心とした海外の資産の購入資金に流れていることを考えると、全ての投資家はアメリカ株を買えばいいと言うことになるのです。
逆に買わなければ損している状態について理解すべき
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パウエル五郎

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