サウジアラビア政府は9月14日に国営石油会社サウジアラムコの石油精製施設が無人偵察機ドローンによって攻撃され、生産能力が50%低下したと発表しました。
今回の事件を受けて、供給量が減った石油価格上昇でXOMなどの石油メジャーの業績にプラスに働くとの思惑で週明けの月曜日の株価は一時3%を上回って推移していました。
株価や石油価格は上がっているものの、これを投資家が喜ぶべきかは不透明な状況です。
そもそも今回の事件ではサウジ隣国のイエメンの反政府武装組織フーシ派による犯行声明が出ていますが、アメリカのポンペオ国務長官はイランの仕業であると名指しで批判しています。
イエメンで犯行声明が出ているのに無関係を主張しているイランを批判するのにそれなりの理由があります。
原発に不必要な濃縮ウランの開発を続けていることを理由に、アメリカはイランが原子力爆弾の開発を行なっていると分析して、昨年5月イラン核合意からの一方的離脱を宣言しました。
こうした合意破棄とともに行われたのがアメリカによるイランへの経済制裁でしたが、イラン側は対抗措置としてホルムズ海峡を閉鎖すると発表します。
ホルムズ海峡は世界の石油消費の30%以上が輸送される海上輸送路です。
その一年後に起きたのが同海峡を渡っていたノルウェー船籍タンカー襲撃事件やイランにおけるアメリカの無人偵察機の撃墜事件でした。
アメリカと同盟関係にあるサウジアラビアへの襲撃はこれら一連の事件に追い討ちをかける形となってしまい、両国は戦争宣言こそしていないものの、緊張状態はほぼ最高潮と言っても良いくらいに高まっていました。
地政学的な整理をすると、アメリカにとってはホルムズ海峡によって石油のパイプラインが握られているのみならず、ロシアと関係を強めているイラン自体が中東地域の軍事的要衝となっています。
そのため、見方によってはアメリカがイランに対して攻撃をするための口実作りをしていると見ることもできます。
石油供給そのものを停止させることにより、ホムルズ海峡封鎖というイランにとっての最大の交渉材料となるカードを無効化することができるからです。
どちらが仕掛けているか見方はどうであれ、地政学リスクの高まりはマーケットにはプラスになりません。
追い詰められたイランは強硬手段に出る可能性もあります。
では実際に戦争が起きたらどのような影響があるのでしょうか。
まず考えられるのが、石油ショックなどの影響です。
過去を振り返ると、石油ショックはマクロ経済の悪化をもたらし、輸入国の製造業の失業率などを中心に深刻なダメージを与えるため世界恐慌を引き起こすリスクもあります。
いくら不況に強いディフェンシブ銘柄とはいえ、こうした状況下では過去のケースを想定すると50%以上の下落を覚悟しておく必要があります。
xomホルダーの中には石油の値上がりを見込んでいる投資家も多いため、仮に中東のエネルギー不安から今後アメリカでシェールガスなどの採掘や流通が増えると採算の悪化から株価下落も起こり得ます。
収益の大半を依存している川上の原油の探鉱(採掘)ビジネスは石油の取引価格に依存していることから、石油の需要の低下によって採掘コストと損益が見合わなくなることに加え、シェールガスの採掘ビジネスは石油の採掘や販売よりも利益率が低いためです。
今回想定したのは最悪のケースではあるものの、一連の事件の延長線上には更なる事態悪化のリスクを抱えていることを意識して、キャッシュポジションを確保しつつ、予め決めた銘柄に淡々と投資を行う必要があるのです。
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パウエル五郎

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