ちまたにあるインデックス投資の嘘と真実
最近、海外株ブロガーの間で楽天VTの実質コストが0.5%以上もあることに失望して、海外指数連動型の投資信託としてはふさわしくないということが話題になっています。
この記事ではこの実質コストが明らかになった点を踏まえて、どの投信を買うべきかについて考えてみたいと思います。
管理人はどの投信を買うべきかについて手数料よりも何をいつ買うべきかを重視しています。
何かを買うべきかについては国内か海外か、海外なら新興国か先進国かというかという選択をした上で、選択した地域に対してどこまで分散化を図れるのかを重視したほうが、小数点以下の数パーセントを競うよりもよほど効率的だと考えるからです。
分散化という側面でいうとリスクを抑えるために地域分散、銘柄分散を図ることも重要ですが、特に初心者であれば時間分散を意識すべきです。
銘柄や地域にはある種のうねりのような動きがあるので、仮に高値で掴んでしまったとしても、損失は時間の経過によって癒すことができます。
幸いなことにどの銘柄に投資すべきかについてはブログ界隈や証券会社レポートによってある程度情報がたくさんありますので参考にすることもできます。
一方で時間分散については過去を遡ることはできないため、なるべく早く資金投下することが資産運用における唯一にして、最大の時間分散に繋がります。
今が安いのか高いのかは将来になってみないとわからないので、少額の資金をなるべく早くマーケットに投下することが重要なのです。
次に考えるべきなのがどの銘柄に投資するのかです。
銘柄を選ぶためにはまずどこの国が伸びるのか、投資対象国について考えるのですが、
投資対象国を決めるプロセスでは経済の大きなトレンドを把握しておく必要があります。
例えば、今であればトランプ大統領によって保護主義的な措置が取られたり、アメリカの税制優遇措置によって主要産業の業績が好調となり、米ドルの長期金利が高くなっています。
若干経済学的なお話として、お金は金利が低い国から高い国に流れるので、新興国の通貨や債券、株価が下落しています。
そのため、経済的にも地政学的にもアメリカの一極集中型のトレンドとなっています。
このようにトレンドが決まったらあとは、(債券ではなく株式に投資するという前提で)個別銘柄を買うのか、投資信託を購入するのかという選択になります。
指数との連動性を高めるのか、指数以上の収益率を目指すのか
個別株を買うのか、多くの銘柄(やその他リスク資産)が多く含まれている投資信託を購入するのかという問いに対して、相当な自信がなければ後者の投資信託を選ぶべきです。
銘柄分散の効果を効かせるためという理由もありますが、素人よりもプロの目利きの方が正しいはずだからです。
管理人は以前、銀行の運用セクションにおりましたが、いわゆる機関投資家と呼ばれる大規模な資金運用を行なっている投資ファンドではあらゆる銘柄選定に関する情報が日々入っていくることに加え、取引方法についても通常の取引所売買のほかにも証券会社などとの相対取引によって、あらゆる手段を使って取引コストを下げる努力を講じておりました。
こうした取引コストの抑制手段や個別銘柄の情報収集能力は規模の効果が働くため、いくらノウハウがあったとしても個人投資家は機関投資家には勝てません。
手段や情報を持たない個人投資家の唯一の生存戦略としては、個別銘柄投資ではなく、投資信託にするべきです。
先ほども述べたようにアメリカを中心に投資信託を選ぶとすると選択肢はそう多くありません。
例えば、日本の個人投資家が投資可能な有名どころとしては、以下の3投信に限定されると思います。
- 楽天VTもしくはVTI
- eMAXIS Slim米国株式(SP500)
- 野村つみたて外国株投信
最後は野村つみたても(ACWII)と楽天VTは全世界株式投資ですが、アメリカに半分以上投資されているのでリストアップしました。
ちなみに管理人はアクティブファンドとパッシブファンドの違いについてはそこまで大きくこだわらなくてもいいと思っています。
アクティブファンドは特定のテーマがその時点の相場にマッチすれば上がりますが、大部分がパッシブに負けます。
強いこだわりがなければパッシブファンド(インデックス運用)をすべきですが、相場の予想は誰にもできないので、こだわりの問題の範疇だと思っています。
さらにこれらの限られた投信の中でフィーが大きい、小さいという基準で選んでもいいのですが、そこまで大きく変わらないというのが管理人の意見です。
例えば、日々のキャッシュフローなどで毎日売買しているファンドはおそらく投資効率が低いはずです。
一方で、キャッシュが一定以上溜まったら銘柄入れ替えやポートフォリオ最適化をするという戦略を取っているファンドにとっては最適ポートフォリオからの乖離が生じてしまいますので、なるべく早くキャッシュポジションを調整する必要があります。
こうした選択肢は相場の上昇局面と下落局面によっても何が正解かは決まりますし、個別銘柄の流動性によっても左右されます。
パッシブファンドでもアクティブファンドでも、内部のファンドマネージャーとしては相場を読む能力が必要とされることに加え、細かい話をすると日中のいつ(寄り、引け、日中のVWAPなどで)売買をするのかなどの取引コストを最小化されることも求められます。
これらを踏まえた上で、冒頭の楽天VTの実質コストについて考えてみたいと思います。
1%以上のコスト(信託報酬)はアクティブ運用でも大きいと言われて敬遠される昨今、パッシブ運用で0.5%以上のfeeは大きすぎるというのが批判の原因のようです。
確かに大きいかもしれませんが、年間で0.5%程度の取引コストをそこまで目くじら立てる必要はありません。
例として楽天でアップルを買うケースで説明したいと思います。
アップルは現在226ドルで、楽天の海外株取引コストは税込で0.486%、最低5.4ドルかかります。
そのため、5株購入しようとすると5.49ドルかかりますが、1株だけ購入しようとすると最低コストの5.4ドルかかります。
前者の多く買う場合は取引コストは0.486%ですが、後者の少ない場合は2.39%もかかってしまいます。
その差は実に5倍もの取引コストに差が出てしまいます。
わかりやすくするため個人投資家のネット証券の取引コストで説明しましたが、こうした手数料は当然ファンド側でも同様に大きな売買金額であれば比較的少なく、小さな売買金額であれば大きくかかります。
では逆にある程度の入出金を待って、まとめてから売買すればいいという人もいるかもしれませんが、そうすると指数との連動性が薄れてしまったり、通常の取引株数に対してファンドが執行する売買株数が多くなってしまい、株価を釣り上げてしまうなどの懸念もあるわけです。
私が前職でGPIFなどの大型ファンドを委託運用していた際は、銘柄入れ替えやキャッシュフローによる売買直前と直後の値段を比較すると大きい銘柄で年間500〜1000bpsほどの差がありました。
明示的なコストと暗示的なコストの代表例として一つずつ説明しましたが、後者の暗示的コストは銘柄の価格に織り込まれてしまうので大部分の人は気づきません。
ちなみに今回は買う例で説明しましたが、売りについても同様のことが言えます。
こうした細かいさじ加減は投信を管理しているファンドマネージャーによっても左右されてしまいますので、些細な取引コストを気にすることはないということです。
むしろ一見、指数との連動性が高いファンドや市場平均に対して勝っているファンドでもこうした暗示的なコストがかかっている可能性があるという点は注意が必要です。
長期間に渡って指数連動型のファンドで指数を大きく下回って推移してしまうということであればパッシブファンドの運用精度が低いということですのでファンドの変更を検討したほうがいいですが、そうでもない限り、時間分散を図るためにも早めに投資を始めるべきというのが管理人の考え方です。
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パウエル五郎

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