


日々増えていく国内の感染者数と毎日自粛を要請するニュースが報道される一方、米国株式市場では3月22日を底に早くも回復しつつあります。
しかし、これをデットキャットバウンスと見る株クラ界の重鎮もおり、特にリーマンショックを経験した投資家は慎重な見方が多いのも事実です。
確かに好調な株式市場の裏にはまだ解決できていない問題が残っているので、今後のリスクイベントについて考え、今後のポートフォリオ戦略の参考にしていきたいと思います。
現在、管理人のパウエル五郎が想定しているリスクファクターは、新型コロナ感染症がトリガーとなっている実体経済の需要回復、米大統領選、資源価格の高騰、原油トレンド、EUに与える5つの要因です。

Contents
実体経済の不活性化
まず短期の時間軸では多くの人が関心を持っているのがコロナの収束状況です。
いわば、ポストコロナという概念そのものが本当にあるのか、という問題とも言えます。
コロナについては人に感染する度に変異し抗体が作られても機能しなくなる、収束した地域でも再感染のリスクがある等様々な報道がなされておりますが、ワクチンや治療薬が開発されれば(長くても)数年以内には収束するという見方が優勢です。
しかし、その問題は2点あります。
一つ目はその期間に経済がどれだけ低迷するかです。
もっと正確に言うとどこまで(Magnitude)の自粛がどれだけ長い期間続くのかです。
現在のアメリカはほぼ経済活動が停止しており、短期間ではあるもののMagnitudeとしては最大規模です。
短期でこの影響がすめば比較的復興も容易であると見込まれていますが、これが長期化すると実体経済への影響としては大きく、一度死んでしまった経済を活性化させるには至難の業となります。
なぜならば人材の流動性の大きいアメリカでは失業率の回復よりも、破綻した企業の再生の方が難しいと見られているためです。
現在でも失業率が過去に類を見ない水準にまで膨れ上がっていますが、選挙を見据えたトランプ大統領は状況が長期化して企業破綻につながらないよう、自粛モードを早期に解除するとの報道もあります。
しかしながら、解除する時期を見誤ると感染リスクが再度高まるため、ウォール街ですら自粛期間の延期を危惧しているほど、まだ状況の改善が進んでいないように見えます。
もう一つの問題点としては、治療薬と予防薬の開発が想定通りに進まない可能性についてです。
ウォールストリートジャーナルによれば、米政府の感染症対策の責任者はワクチン開発に対してそこまで楽観視していないとのことです。
ただし、市場ではこうした悲観論はあまり受け入れられにくく、これ(期待が裏切られた場合)が逆に今後のリスクファクターになる可能性があります。

トランプ政局と対抗馬の動向
昨年の年末では民主党のエリザベス・ウォーレン、今年年明けにはバーニー・サンダースが2020年の大統領選の有力候補と目されており、いわば現在の金融至上主義からの脱却をマニフェストとしていることから市場関係者から嫌気されていました。
もっとも現在では最終的にはトランプに落ち着くとの見方が優勢で、これが市場の下支えをしている要因でもあります。
では何がリスクファクターというと、選挙までにコロナが収束できない場合、オンライン選挙を実施せざるを得ない可能性があり、これまで投票に参加していなかった若者や学生などの投票率が高まるとトランプ氏の対抗馬に票が多く入る可能性もあります。
また、仮に選挙を通じてトランプ大統領が再選しても、コロナの混乱によって選挙そのものが無効になるリスクもあります。
民主党では予備選を通じてサンダースが撤退した今、副大統領経験もある上院議員のジョー・バイデン氏がトランプ大統領の対抗馬として最有力視されていて大幅な波乱要因にはならない可能性が高いですが、依然上記の通り注視しておかねばならないリスクファクターとして残っています。
大統領選、トランプのodds悪化してる一方で、バイデンは良化してきたな。どんでん返しなるか。
— 武漢研究所 (@japanchart1) April 18, 2020
さらにトランプ優勢で進んでいる現在の大統領選で、しかも対抗馬が比較的現実感のある政策を主張している状況でも一抹の不安があることから、トランプ再選が難しいと言われている4年後の米大統領選ではこれまで金融市場優先、株価対策優先で進めてきた政局が転換する可能性があり、市場ではこのリスクを恐れています。
そのため、株価対策がトランプの支持層であり、今後も株価の強気姿勢は続くものの、10年単位の長期で考えると不安定になる可能性もあり、市場優先の政局の揺り戻しが起きる可能性も視野に入れておく必要があります。
4年前、まさかのトランプ氏当選でガラリと変わった印象のあるアメリカですが、ポストトランプの世界はなかなか見通せない状況で、これが先行きの不透明感につながっているのです。

金融緩和による過剰流動性相場
米国大統領選にも関連し、再選を目指しているトランプ大統領は株価対策として金融政策・財政政策を総動員するとともに、非伝統的な金融緩和策を通じて市場に流動性を供給して株価が底上げしていますが、実体経済はシュリンクしたままです。
そのため、需給グラフで例えると需要のないところに供給が増えることになるため、物価が大幅に上昇するインフレの状態になり、ドルなどの通貨は減価し、資本家はペーパーアセットを売って希少価値の高いゴールドなどの資源が買われて上昇することになります。
現在では失業率が大きく上昇している観点では排他的な選択肢となっている金融緩和ですが、引き際を間違えると1929年10月24日の、いわゆるブラックマンデー同様、大暴落につながるリスクを孕んでいます。

原油のトレンド
そもそも原油価格のトレンドはアメリカでシェール革命が起きてから長らく下落トレンドにありましたが、これによってしわ寄せがきていたのがサウジアラビアなどの中東諸国です。
コロナ感染の拡大によって今後原油需要が低迷するとの想定から、3月に実施したOPEC+では協調減産が主な焦点でしたが、サウジがロシアと仲違いして合意に失敗したことがさらに原油価格を押し下げる結果となりました。
その後4月9日に開いた緊急のテレビ会議で合意した日量1,000万バレル減産が合意したものの、市場では期待値未満だったとの評価から反転には至っていません。
原油価格が下落したままだとアメリカのシェール掘削企業と関連事業へ投資している金融業、商業用不動産業に影響すると言われています。
その影響として、低格付け社債(ハイールド債)やETFの投資比率が大きいと言われているSPYDなどが挙げられます。
それでも業界大手のXOM,CVX,RDS,BPにとっては競合の淘汰が進むことで長期的にはプラスに働くと期待しています。
なぜならアブダビ投資庁を始め、サウジアラビアなどのオイルマネーは石油関連株をはじめとしたアメリカ株式市場にも投資していることから石油市場の低迷は中東諸国にとっても負荷となるため長期化するとは考えづらいためです。
そのため、短期的には上流の売上高の低迷が続く石油関連株への新規投資は抑えた方がいいかもしれませんが、長期保有であれば問題ないと考えています。

EU加盟諸国の財政悪化と今後の動向
今回のコロナ自粛を受けて、特に影響が大きいといわれているのがヨーロッパです。
EU加盟諸国、特にイタリアとスペインの財政危機が再燃し、リーマンショック後のギリシャ危機を彷彿とさせるソブリンリスクにつながることも想定されます。
仮に緊縮財政によってソブリンリスクを乗り越えたとしても、ブレグジットを目の当たりにした他の加盟国はEU加盟による負担増を嫌気してEU体制の崩壊につながる可能性さえあります。


この記事を読んだ人は以下も読んでいます...

パウエル五郎

最新記事 by パウエル五郎 (全て見る)
- 【ポストコロナの世界】様々な民主化の流れが加速する - 2020年4月25日
- コロナを受け保有銘柄の入れ替えを行う - 2020年4月23日
- コロナを受けてポートフォリオ戦略を変更する! - 2020年4月22日