IPOには選び方がある
このブログを読んでいる方はIPO投資に興味がある方でしょう。
IPOは株式投資の醍醐味の一つです。
https://www.kabuworld.com/ipo%E6%A0%AA%E6%8A%95%E8%B3%87%E3%81%AE%E3%81%99%E3%81%99%E3%82%81/
うまくやれば数十〜数百万円の利益が一瞬で得られるので、その分、多くの投資家が狙っています。
人気の案件は抽選制となるため、とりあえず申し込むという方もいるのではないしょうか。
まず、下のグラフを見てもらいましょう。
これはメルカリ(4385)とファンコミュニケーションズ(2461)の上場来の株価推移です。
メルカリは2018年6月19日に上場し、初値5,300円をつけた後は一貫して下落し続けています。
メルカリはまだ上場してから日が浅いのでなんとも言えませんが、ファンコミュニケーションズなどは上場後、高値をつけた後、株価は下落する一方です。
このように、どちらも大きく下落していますが、IPO銘柄の多くは上場ゴールと揶揄されるように、初値を上回ることができずに低迷するケースが多いです。
また場合によっては、上場初日の寄り付き前に大きな売りが入れば、初値が(IPOの公募)価格を下回る、いわゆる公募割れが起きることもあります。
IPOした銘柄が公募割れしたり、初値をつけた後下落する光景は特に日本市場ではよく見られます。
これは多くスタートアップが創業時にVCやPEファンドなどからシードマネーとして多額の投資を受けていることに加え、低賃金で激務をこなした従業員がSO(ストックオプション)を売り越すためです。
これではシードマネーを投じた初期投資家やIPOで当選した投資家には旨味がありません。
売られると分かっているなら、セカンダリーで値上がりを期待した投資家も現れないからです。
こうした事態はこのIPOに関わる全ての人にとって不幸で、IPO制度そのものの崩壊に繋がるため、多くの場合、2つの制度が使われます。
その1つがロックアップ期間です。
ロックアップとは
ロックアップとは大量に保有している株主がIPO後に一定期間売却できる量を制限するものです。
ロックアップの内容はIPOの案件ごとに異なりますが、その詳細は目論見書に記載があります。
多くの場合、上位の大株主に対して数ヶ月程度のロックアップ期間が設けられ、その期間は売ることができません。
以下はメルカリの株主構成とロックアップ期間です。
オーバーハングへの備え
上場後に売られることを防ぐ、もう1つの方法がオーバーハング対策です。
ロックアップについてはご存知の方でも、オーバーハングについてご存知ない方は多いので併せて解説します。
オーバーハングとは、大量に保有している大株主による売り圧力のことです。
直訳すると「持ち過ぎ」という意味のオーバーハングへの備えとして、近年よく用いられるのは外部の大株主の保有している株式を、IPO前に長期保有目的の機関投資家に買ってもらうことなどがあります。
ラクスルなどがオーバーハング対策によってIPOを成功させました。
オーバーハングを解消することによって小規模の既存株主はマーケットで大量に売られることに心配する必要はなくなりますし、また長期の投資家が保有することでマーケットで値崩れしにくくなり、IPOに当選しなかった投資家も安心してセカンダリー市場で買い付けることができます。
外部の大株主は市場で自由に売却することこそできませんが、IPO前に自分たちで合意した価格で売却できます。
また、場合によっては一定比率を持分として残すことで、疑心暗鬼が払拭されたマーケットで安心して長期間持ち続けるという選択肢も取ることができます。
成功するIPOはこうした大株主の持分をコントロールし、上場後の流動性を確保するなど対策が取られています。
逆にいうと、上場前に合理的な対策が取られない銘柄は上場後株価が低迷するため、資金調達の難易度が上昇します。
本来株式市場への上場は資金調達を行いやすくするためであるのに、IPOによって企業価値が大幅に下落してしまえば元も子もありません。
そのため、企業側からしても上場後の流動制対策を行うことは経済合理的であるのですが、こうしたロックアップ規制やオーバーハング対策は自主規制であるため、ごくたまにオーバーハング状態でロックアップ期間も設定されないまま、IPOをしてしまうケースもあります。
IPOに応募する際はぜひこうした視点でもチェックしてみてください。
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パウエル五郎

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