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下落局面への備え
米株は成長市場のため、常に下落が叫ばれてきました。
右肩上がりの相場では常に最高値を更新するため、こうしたリスク回避的な発言は幾度となく目にするものです。
リスクを回避する際に株を売ってキャッシュ比率を高めようとする投資家もいますが、果たして正しい選択なのでしょうか。
下落直前のピークで売り時を掴むことができれば正しいですが、クレバーな投資家はリスクを抑えたままさらにリターンを上げる投資法を編み出してきました。
今回はこうした手法についてご紹介しようと思います。
管理人は景気変動に応じて、グロース(無配)株式→有配株式→劣後債(社債)→ソブリン債という順にリスク管理をしています。
相場上昇局面のグロース株以外は基本スタンスとしてホールドしますが、景気循環とともに買い増し対象とする銘柄を入れ替えています。
具体的には、景気拡大局面ではアマゾンなどのグロース株(無配)を購入し、
ピークを迎えそうなタイミングでディフェンシブな有配銘柄を買い増し、
リセッションが始まるとともにソブリン債もしくは一定格付け以上の中堅企業の劣後債などでローテーションします。
ソブリン債はドル高などの為替妙味があればトレジャリーノート(特に2~3年もの)、もしくはトレジャリービルなどの比較的中短期が対象になります。
米国であれば数年もすればリセッションから抜け出すからです。
ディフェンシブ銘柄は生活必需品である食品、医薬品、社会インフラの電力・ガス、鉄道、通信などです。
高まる過熱感
2018年9月末の28日(金)現在、日経平均は320円上昇し、年初来高値を更新しました。
世間ではバブル崩壊後の高値を約30年ぶりに更新したというバブルさながらの好景気ムードに浮かれている中で、管理人個人としては、イギリスのハードブレグジット・米中の貿易戦争激化・イタリアの財政悪化などいくつかのリスクイベントを注視しています。
割高なバフェット指数
2018年9月末時点でバフェット指数は147.81%と、株価はGDPから適正とされる水準より約50%も割高になっていることを示しています。
ちなみに日本はアメリカより若干低く128%ですが、日本においても過去最高水準であることに変わりません。
米国債投資を考える
足元では利上げを見込んで短期金利が上昇していますが、長期金利は伸び悩んでおり、イールドカーブがフラット化していることが最近話題にもなっています。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/mk180921.pdf
そのため長期債よりも買うとしたら短期債を買う予定ですが、(ドルを保有し続ける前提でなければ)円高局面では米国債を保有することも為替リスクに繋がります。
尤も株よりはまだましですが、召喚リスクのある債券は為替の戻り待ちといった感じです。
米国ディフェンシブ銘柄への投資を考える
そこで、今回は来たるリセッションに備えて景気変動に強い高配当株を狙うにあたり、高配当銘柄の代名詞であるベライゾンコミュニケーション(Verizon Communications Inc.:VZ)について見ていきたいと思います。
相場の下落局面では、(EFPなどにより)ダウ先物に連動して同社株価も下落する可能性はありますが、通信などの生活必需サービスでは財務が悪化する範囲は限られ、株価も機関投資家のアロケーションも期待されるため、安くなったところで更に買い増しする予定です。
通信大手で2番目に大きいベライゾンVZ
9月20日時点でVZは2249ドルと時価総額ベースで2番目に大きい通信企業です。
https://marketrealist.com/2018/09/a-look-at-verizons-valuation-multiples-in-september?utm_source=yahoo&utm_medium=feed&yptr=yahoo
ちなみに同業ではAt&Tは2453億ドルで同社と拮抗していますが、Sprintは260億ドル、Tモバイルは585億ドルと、アメリカ通信業界は大手二社が大部分を占めています。
2018年9月末時点でVZは53,39ドルで、ボリンジャーバンドのミドルレンジ54.38ドルに近く、売られ過ぎでも買われすぎでもない適正水準になっています。
バリュエーション指標では過去12ヶ月のEV/EBITDA倍率は7.3倍と同業他社とほぼ同水準です。(AT&T、Tモバイル、Sprintの同指標は8.7倍、8.0倍、5.0倍)
ちなみにアナリスト予想ではVZは2018年末時点で7.1倍、2019年時点で7.0倍になると予想されていることから、今後も特段大きな変化は考えづらいです。
株価はこの五年間概ね安定していて、45ドルになったら買われ、55ドルになったら売られるという値幅で動いています。
PERはVZが15.8倍、AT&Tが18.2倍、Tモバイルが24倍と他社に比べてやや割安と言えるでしょう。
VZの最大の特徴はその高い配当水準で、米国の中でも最大の4.51%であることに加え、なんと毎年のように増配しているのです。
増配の幅はそこまで大きくありませんが、過去11年間連続増配するという記録も持っているのです。
リーマンショックでの最大ドローダウン
2007年におきたリーマンショックでは、他の銘柄同様、ショック前の水準から一年かけて35%ほど下落していますが、注目すべきはその後ダウがさらに下落して2009年3月までに55%下げているにも関わらず、その間VZはほぼ下落していないという点です。
当然、その間も配当が出ていますし、その後の戻りも早く全体として変動幅が市場全体に対して小さく済んでいます。
これはGPIFを含む大手年金ファンドを運用している機関投資家が指数の下落局面においてアセットアロケーションを実施してVZなどのディフェンシブ銘柄を手厚くするためです。
したがって、他に鉄道、電力・ガス、医薬品なども同様の動きをします。
景気拡大期においてアンダーパフォーム
このような低ベータ銘柄は下落幅が限定される一方で、上昇局面でもマーケットについていきません。
そのため、市場平均が直近高値を更新した現状では、保有している投資家は市場平均をアンダーパフォームしてしまいます。
逆を言えば過熱感が見られないとも捉えられるので、いつ買っても損しない銘柄という見方で管理人は下落時にこつこつと買い増しています。
売上は概ね安定、利益は上昇傾向
VZは総合電気通信会社として、有線音声、データ/無線/ネットサービス、電話帳発行などを行い、連邦政府向けにもサービスを展開しています。
この5年間の売上と営業利益を見てみるとほぼ安定して推移している中、純利益は5年前の3倍、前年の2倍に急増しています。
これは2017年に実施された大幅な法人減税による効果で、将来の税負担に備えて計上してた繰延税金負債の再評価によるプラス要因のほか、主力の携帯事業が好調に推移したことなどが要因です。
政府とのパイプも強く、減税による恩恵を強く受けており、浮いた資金を携帯の新規契約キャンペーンに使うことで契約件数を伸ばしています。
まさに代表的なトランプ銘柄とも言えますが、好調な株価の背景にはこうした「国策に売りなし」という格言通りの実態もあるようです。
リセッション時のVZ投資法
VZのようなベータが低く高配当な銘柄は、リーマンショックでのドローダウンが他の銘柄に対して限定されるため、特に相場下落局面では手厚く持つべきです。
アメリカの携帯電話業界は、先に触れた通りAT&TとVZによる実質2強体制のため、スケールメリットが働きます。
人口増加が続いているアメリカでは携帯新規契約による売上が利益を押し上げ、その利益を使って株主還元を図りつつ、収益化が見込まれるネットコンテンツの買収などで先行投資も怠らないという盤石の体制で今後も株価は好調に推移するでしょう。
経済がリセッションに突入する可能性のある現時点では、こうしたスケールメリットが聞く業界で堅調なビジネスを実行できているVZを買い増しつつ、配当が入れば再投資という投資手法がおすすめです。
株価急落のタイミングはどんなに天才でも予測することができませんので、一般の投資家はVZのようなディフェンシブ(低ベータ)で高配当銘柄を積み増すべきです。
これにより、キャッシュ比率が高いまま市場平均に対してアンダーパフォームしてしまう自体を回避でき、配当を受け取って再投資することで成長市場の恩恵を享受することもできますし、仮に市場が暴落しても他の銘柄ほど下落せずにすぐに回復できるというメリットはあります。
他に低ベータ、高配当銘柄としては、飲食業界のKO(コカコーラ)、家庭用製品を扱っているP&G、JNJ(ジョンソン&ジョンソン)などもありますので、どこかで記事にしてみたいと思います。
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パウエル五郎

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