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憲法改正の経済的意味
経済は経世済民という言葉の略です。
『世を経め、民を済う』(よをおさめ、たみをすくう)という意味です。
納めじゃなくて経め、救うじゃなくて済うと書きます。
政治と経済は切っても切り離せない関係であり、最終的には国民が幸福になるための仕組みであるべきです。
最近、よく耳にする憲法改正などの政治的な議論についても同様です。
なぜ憲法改正が国民の利益につながるのか、またどのように良くなるのか。。
この話題は自衛隊とか軍隊とか不穏な言葉が出ることもあって、多くの方は避けがちです。
しかし、この政治の議論を経済に当てはめて考えてみると、なぜ必要なのかわかることがあります。
今回は株価や景気という側面で、この憲法改正が我々の生活にどのように影響するのか、また資産運用に活かせるヒントを探ります。
憲法改正が争点となった自民党総裁選
2018年9月20日午後、安部首相の任期満了に伴う自民党総裁選の投開票が行われた結果、3選目となる安部首相が自民党総裁になりました。
そもそも議院内閣制である日本では、国民が国会議員を選んで、その議員が首相を選ぶルールになっています。
そのため、2017年9月の衆議院選挙で国民が自民党を選んだ時点で、ほぼ100%に近い形で安部首相になることは想定されていたので、この選挙自体が出来レースと表現しても過言ではありません。
管理人的には、重要な争点である憲法論議において圧倒的に不利な状況に置かれた石破さんは当て馬にされたと思っています。(直前に野田総務大臣の立候補できなかったことなどのバタバタはありましたが…)
しかし、日本が直面する、人口動態の大きな変化と絶対数の現象、社会保障費や医療費の増大に伴う財政問題とそれに絡む消費増税や金融政策におけるテーパリングの議論とデフレの問題など、重要な争点がたくさんある中で、東京オリンピックをまたぐ年の内閣が樹立したことは今後の経済的見通しを占う上で重要なタイミングだと思っています。
この選挙で大きな争点となっている、自衛隊が憲法に明記されることの意味とはどのようなものなのでしょうか。
自民党総裁選の結果、憲法はどうなるの?
いくつかの案はあれど憲法改正は不可避になります。
そもそも選挙で戦っていた両者の違いはなんだったのかおさらいしてみます。
安部首相は憲法9条の1項と2項を残したまま、つまり日本は戦力不保持のまま自衛隊について明記するという案に対して、石破さんは憲法改正は急がないというスタンスでした。
元防衛大臣の観点から自衛隊が戦力ではないという宣言は矛盾しているので、国民に是を問う立場でした。
しかし、党是として掲げていた憲法改正について、国民の理解向上を図ることが重要だという不明瞭な立場は自民党内からも不評で、案の定選挙に破れてしまいました。
そのため、安部首相が主張していた戦力不保持のまま自衛隊を憲法に明記するという案に決定します。
株価に与える影響は?
これまで憲法改正のための政治的支持基盤の強化という論点を中心に財政政策、金融政策などの景気対策が語られることが多かったように思えます。
しかし、今回の選挙で憲法改正の具体的内容が決まった結果、2つの観点から短期、中期的な株価に与える影響を予想することができます。
1つは国内の政治的資本が政権中枢に集まることにより、構造改革が進むという比較的短期的な見地です。
もう1つが日本が戦力ではないにせよ、防衛力の保持を世界に示すことによる長期的な地政学的見地です。
国内政治への評価で見る株価への影響
憲法改正には当然今後も保守派の反対が予想されますが、党是である憲法改正を実現することができれば党内の求心力が向上します。
すると政策運営もしやすくなり、こうした政治的な資本いわゆるに厚みが増してくると長年の課題であった財政健全化を含む経済構造改革が加速します。
ここでの政治的資本とは、党内の人脈や実績、国民からの支持など、政財界において自分の意見を通すのに必要な政治的影響力のことです。
構造改革が進むことにより、内外の投資家からの国内投資が進むと考えられており、その結果、株価は上向くと考えられており、場合によっては株価主導で好景気に突入する可能性と見られています。
地政学的な見地から見る株価への影響
憲法改正によって日本が防衛力を持つということはそれまで、沖縄などを拠点にアメリカ軍だけが監視を行っていた東シナ海への影響力が強化されることになります。
ここでいう影響力とは実際の軍事力というよりも領域侵犯に対して牽制する効果があることを意味しており、今回の憲法改正の大きな利点でもあります。
憲法改正を正当化するためには、近隣諸国での紛争時において自国の被害が想定される場合、軍の派遣や対中国、ロシアといった西側諸国に対する東アジアの防衛拠点として、アメリカと強調できる体制があるということを見せる必要性があることも背景にあります。
しかし、本当の狙いは最終的にアメリカからの政治的・経済的・軍事的制約に対する備えを将来担保することを見据えての憲法改正であると管理人は見ています。
歴史的な経緯としては、第二次世界大戦の末期においてブレトン・ウッズ体制が敷かれ、その後のニクソンショックに至る過程でドルを基軸通貨としたアメリカは、言葉通り世界の覇権を握ることに成功したわけですが、日本が高度成長期を経てアメリカに対して輸出して儲けまくっていたタイミングで、プラザ合意というウルトラCを発動します。
このプラザ合意によってドル安に誘導された結果、日本製品はアメリカで売られなくなるという、いわゆる円高不況に陥った結果、日銀は金融緩和を実施、その後平成バブルが崩壊し、失われた20年を経験することになります。
このプラザ合意がなければ平成バブル崩壊も起きず、平成不況が起きることもなかったことを考えると、甚大な経済的損失を被ったわけです。
アメリカは世界秩序という大義名分で、世界中の紛争で軍事力を見せつけ、経済の覇権を握ってきましたし、これからも握り続けていく予定です。
現在の中国に見られるように経済発展目覚ましい国がアメリカの覇権を脅かすとなればすぐさま経済制裁を下す様を見ても明らかです。
これは冒頭の『世を経め、民を救う』という経済の一スタイルだと思います。
ただし、ここでの民とは自国民のみであるという注釈が必要になりますが。
経済的にも軍事的にも強い国が弱い国から富を吸い上げて自国民を裕福にする、という光景は世界史で見る世界大戦前にも通じるものがあります。
ここで、自民党の使命を引用します。
思うに、ここ(現代における愛国精神の喪失、経済弱体化、政治的昏迷)に至った一半の原因は、敗戦の初期の占領政策の過誤にある。占領下強調された民主主義、自由主義は新しい日本の指導理念として尊重し擁護すべきであるが、初期の占領政策の方向が、主としてわが国の弱体化に置かれていたため、憲法を始め教育制度その他の諸制度の改革に当り、不当に国家観念と愛国心を抑圧し、また国権を過度に分裂弱化させたものが少なくない。
日本の教科書では戦後マッカーサー総司令官によって民主化が進んだと言われていますが、当初、こうした教科書を最初に作ったのもアメリカでした。
実際には財閥が解体され、土地は強制的に買い上げられた上、「短命政権」「決められない政治」と揶揄される国会の意思決定システムもGHQによって決められました。
アメリカ国民が豊かな生活を送ることができるよう、大戦後の日本では富を奪われ、国力が弱体化し、経済的な主従関係を結ばれてしまった、というのは政治ゴシップや都市伝説ではなく、事実として認識され始めています。
ちなみに戦争の敗戦国も含め、世界中どこにも他国が作った憲法を使い続けている国はありません。
日本がアメリカと対等に向き合い、緊迫化する世界情勢の中で独立した互角の防衛力を保持するためには、自衛隊の存在意義を内外に対して公式に認めることが不可欠です。
当然、アメリカもこの動きを察知していますが、アメリカ国内の防衛予算の膨張と他国への経済統治に対する世論の反発を抑えるためには日本が防衛力を保持することに消去法的に理解を示さざるを得ません。
日本としてはプラザ合意のような甚大な経済的損失を再度被ることを回避するためには憲法改正の発議が必要だったのです。
現在の国力、ましてやアメリカに守ってもらっている立場で当事国として経済的制裁を受けたらひとたまりもないのですからね。
こうした観点でも株価という経済的指標どころか日本の存続を左右するくらい、憲法改正がもたらす経済的恩恵は計り知れません。
戦争は絶対に繰り返してはなりませんが、アメリカの経済的属国にはなりたくないですからね。。
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パウエル五郎

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