早速ですがみなさん、サッカーはお好きですか?
実は私自身すごく好きで、最近の最も悲しい出来事としてメッシが代表引退を匂わせるというニュースがありました。
メッシは世界最優秀選手に捧げられるバロンドールに史上最多の5回も受賞するなど、サッカー史上最高のフォワードとして名高い偉大な選手です。
そんなメッシが今回、代表引退を匂わせたことで、所属チームのバルセロナとの契約が有効な2018年以降の契約に暗雲が垂れ込めています。
一方、FCバルセロナの魅力といえば圧倒的なボール所有率を前提とした華麗な個人技とハイセンスなパスワークで高速、超攻撃型のサッカーを展開するところにあります。
選手としても監督としても活躍したヨハンクライフから、現在ではメッシはじめ、スワレス、ネイマール、イニエスタ、ピケなど各国を代表する選手が所属するビッグネームです。
ちなみにどうでもいい情報ですが私は小学生の頃、よくクライフターンを真似していました(あの当時のサッカー少年はみんな真似していたと思います)。
今回はいつもと少し色合いを変えて私の大好きなメッシに辞めないで欲しいという思いも込めて、バルサにとってどれだけ不利益を被るのか算出してみようと思いました。
仮にバルサが株式会社だったとして、類似企業の株価を参考にその株価下落も予想してみました。
Contents
クラブチームの経済的価値について
まずはクラブチームの経済的価値を算出します。
一般にサッカークラブの資産価値は
放映権、チケット販売、商活動(スポンサー収入、グッズの収入)の3つに要素に分けて計算していきます。
そして、それぞれの収益力から全体の資産価値を算出していきます。
まずは各ファクターを算出していきます。
出典は、以下の世界的に有名なデトロイト会計事務所が算出したものを使用しています。
http://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/uk/Documents/sports-business-group/uk-deloitte-sport-football-money-league-2016.pdf
http://thesportsbusiness.jp/archives/1787
放映権
放映権とは主にプレミアリーグなどで開催された試合をテレビやネットを通して放映するための権利です。
メディアはクラブにお金を払ってこの放映権を買うため、クラブの主な収益源の一つとなっています。
バルセロナの場合、リーガエスパニョーラ(Liga Española)において試合をする際にメディアとの間で結んだ放映権による収入があります。
リーガエスパニョーラはスペインではラ・リーガ(La Liga)と呼ばれます。
リーガエスパニョーラ全体の放映権料は現在約8億ユーロ(約1,081億円)、16/17シーズンには約10億ユーロ(1,351億円)に増加すると見込まれています。
このうち、バルセロナの放映権収入は1億8,200万ユーロで全体の23%を占めています。
http://biggerlive.com/?p=9918
リーガエスパニョーラのもう一つのビッグクラブ、レアルマドリードもほぼ同じくらいの放映権収入を持っています。
以下の表のように優勝回数が多いトップ2つのビッグチームだけで全体の半分近くの放映権を持っています。
リーガエスパニョーラの優勝回数
プリメーラ・ディビシオン創設時の10クラブ | |||||
クラブ | 本拠地 | 創設年 | リーグ
優勝 |
13-14
所属 |
備考 |
FCバルセロナ | カタルーニャ地域, バルセロナ | 1899年 | 23回 | プリメーラ | コパ・デル・レイ優勝26回 |
レアル・マドリード | マドリード | 1902年 | 32回 | プリメーラ | コパ・デル・レイ優勝18回 |
アスレティック・ビルバオ | バスク地域, ビルバオ | 1898年 | 8回 | プリメーラ | コパ・デル・レイ優勝24回 |
レアル・ソシエダ | バスク地域, サン・セバスティアン | 1909年 | 2回 | プリメーラ | コパ・デル・レイ優勝2回 |
アレナス・クルブ・デ・ゲチョ | バスク地域, ゲチョ | 1909年 | なし | テルセーラ | コパ・デル・レイ優勝1回 |
レアル・ウニオン | バスク地域, イルン | 1915年 | なし | セグンダB | コパ・デル・レイ優勝4回 |
アトレティコ・マドリード | マドリード | 1903年 | 10回 | プリメーラ | コパ・デル・レイ優勝10回 |
RCDエスパニョール | カタルーニャ地域, バルセロナ | 1900年 | なし | プリメーラ | コパ・デル・レイ優勝4回 |
CEエウロパ | カタルーニャ地域, バルセロナ | 1907年 | なし | テルセーラ | |
ラシン・サンタンデール | カンタブリア地域, サンタンデール | 1913年 | なし | セグンダB |
https://ja.wikipedia.org/wiki/リーガ・エスパニョーラ
こうした優勝回数の偏りが生じている背景には、クラブ間の収入格差が優秀な選手の獲得やチーム運営に不均衡が生じさせていると批判する声もあります。
ラ・リーガによるチーム間格差解消とバルセロナへの影響
こうした批判に対して、運営側はこれまでチームとメディアが個別に契約していた状態から、今季からはイングランドのプレミアリーグのようにリーグが一元管理して分配性にするといわれています。
各クラブとメディアが個別に契約を結んでいたリーグの放映権をスペインプロリーグ機構ラ・リーガできるようになると、トップ2チーム以外での下位チームでも選手の補強が可能になりリーグ全体の活性化につながるのではないかと期待されています。
http://www.goal.com/jp/news/73/スペイン/2016/05/07/23226692/放映権が一括管理されたリーガアトレティコの来季収入は欧州トップクラスの1億ユーロに
しかしその結果、これまで自由にメディアと交渉できたレアルとバルセロナの放映権収入は確実に減少します。
商活動(グッズ販売とスポンサー収入など)
通常、プロサッカーチームには企業スポンサーがついています。
バルセロナにも中東カタールのドーハにあるハマド国際空港を本拠地とするカタール航空というスポンサーがついていますが、
ここで「ついています」と言う表現は「ついていました」に変えた方が適切かもしれません。
というのもこのブログを執筆している2016年6月30日が契約期限だからです。
7月1日以降はカタール航空との提携交渉が難航しており、次期スポンサーが決定していません。
一部ではナイキとの提携交渉が確実との噂もありますが、このタイミングでの公表がなされていないので、一時的にユニフォームの胸スポンサーがいない状況が続くかもしれません。
https://qoly.jp/2016/03/18/barcelona-vice-president-on-next-year-kit
しかし、そもそもの話をすると2013年以前のバルセロナにはこのスポンサーという仕組みがありませんでした。
ここがバルセロナのすごいところなのですが、現在のようにスポンサーがつくまではソシオと呼ばれる有料会員制度とペーニャと呼ばれる公認団体による会費のみによって運営されていました。
ソシオの事をファンクラブと呼ぶ人もいますが、バルサのソシオは18万人を抱える世界最大のクラブ会員制度となっており、会員がオーナーとなってクラブ運営をするという理念の元、運営されています。
ちなみに通常のファンのことをバルサ・クレと呼んだりします。
ちなみにちなみに、日本のJリーグのチームにもバルサを見習い、ソシオという名のファンクラブを作ったりしていますが、本場ソシオは年会費3万円程度(為替変動あり)に対して、鹿島アントラーズの年会費は11万円もします。
日本のサッカーチームは商業主義が若干強い印象が強いですが、対してバルサソシオの場合は会員になりたくても現在は新規会員になるためには一定年齢以下の子供と世襲制という狭い入り口で、これから地元民でもない成人が会員になることはほぼ不可能ですが、それでもソシオには入りたいという人が後を絶ちません。
こうしたブランディングやロバストなステークホルダー管理体制がクラブ運営を強固なものにしているように思いますし、だから2013年までは企業スポンサーがいなくて十分運営できたのです。
さて、バルサソシオの会員18万人で年間の総会費収入だけでも1,800万ユーロとなっています。
実はソシオ会員には幾つかのプランがあるのですが、観客席指定の会員制度もあり、チケット収入として計上するか迷ったのですが、企業の安定運営のための資金を会社が株式を発行して株主から調達する手段に例えると企業スポンサーもソシオも投資先の理念に投資するステークホルダーであることには変わりないので、ここではチケット収入に含めずスポンサー収入として計上することにします。
こうしたソシオ会員費用からの収入に加えて、カタール航空の契約金3,500万ユーロ(45億5,000万円)を含むナイキ、アディダスなどのその他企業スポンサーの年間契約金合計及び公式ユニフォームなどのグッズ販売などの総収入は2億4,410万ユーロ(317億3,300万円)となります。
http://sport-japanese.com/news/2016/4/20/バルサ収入問題%20麻薬でもいい
FC Barcelona: 2015 Revenue pro le (€m)
チケット
バルセロナは所属リーグのリーガエスパニョーラのほか、UEFA Champions Leag(UCL)などのタイトルマッチによる収入などがあります。
このうちUCLはゲーム数に応じて賞金が異なっていて、優勝まで行くと数千万ユーロ(12/13シーズンの2050万ユーロ)に加え、UEFAの商業収入であるマーケットプールから5,000万程度がクラブチームに分配金として付与されます。
こうした通常のチケット販売を含めたゲーム開催による売上は1億1,690万ユーロ(151億9,700万円)となります。
バルセロナの本当の強み
以上、一般的なクラブ運営の収益カテゴリーに基づいて、放映権収入、商業活動による収入、チケット販売収入について見てきましたが、実はバルセロナの経済的価値はこうした明示的な収益源とどまらず、いわゆるのれんと呼ばれるような無形資産を有していることも特筆すべきポイントとして挙げられます。
移籍市場におけるIPOとラ・マシア
こうした無形資産の最重要項目として挙げられるのがラ・マシアです。
カタルーニャ地方の農家を意味する、バルセロナの下部組織のラ・マシア(La Masia)はメッシのほか、イニエスタ、シャビ、プジョール、ピケ、グラディオーラ監督を輩出しており、ヨーロッパのトップクラブ移籍市場における新規上場銘柄製造工場ということができます。
どういうことかというと、通常、優良選手を獲得するためには普通のフットボールチームであればヨーロッパや南米などで活躍する選手を引き抜くのが常套手段ですが、バルセロナの場合、地元カタルーニャを中心に世界中からセンスの良い子供を選抜し、独自の教育システムによる寮生活でサッカーエリートとして育成するとともに貧しい家庭には家族ごと養うという高待遇を与えているのです。
このラ・マシア寮で育成された500人のうち、10%がトップチームに昇格、他の子供達も世界中のクラブチームで活躍しています。
特に2010年のFIFAバロンドール投票では最終候補の3人(MFシャビ、MFアンドレス・イニエスタ、FWリオネル・メッシ)をすべてラ・マシア出身選手で占めるという偉業を成し遂げています。
こうした選手育成システムを兼ね備えたバルセロナは、スポーツを通じて全世界に何百万、何千万のサッカーファンという名の顧客を持つ、いわば一つの営利組織の一面を持ち合わせながら、自らが移籍市場における超優良商品というエリート選手を育成し、選手の経済的価値を高め、二次流通市場(移籍市場)に送り出すという役割を担っているのです。
もちろん、通常のIPO同様、流通市場よりも発行市場の方が利益率が格段に高いので、移籍市場で取得するよりも自ら育成して放出する方が経済合理的だという訳です。
バルセロナの強さの源泉
これらは全てFCバルセロナをクラブ以上の存在と呼んでいる地元の人々を中心としたソシオが支えているからこそできることなのです。
なぜここまでバルセロナは地元民から愛されているのでしょうか。
その背景には中世にカタルーニャ連合王国として地中海の覇権を握ったカタルーニャ人がスペイン王国成立とともに独自の歴史、伝統、習慣、言語を持つことを禁じられ、抑圧された中で唯一カタルーニャ語を話すことが許された施設がバルサのホームスタジオのカンプ・ノウだったということがあります。
同じリーガエスパニョーラのレアルマドリッドとの一戦はエル・クラシコ(伝統の一戦)と呼ばれ、中央政府とカタルーニャ地方の代理戦争と呼ばれるほどです。
実際、エル・クラシコでは試合前後で暴動がよく発生し、現地警察が神経質にならざるをえないこともあります。
こうした歴史的な背景を含んだ熱狂的なファン層から支持されている結果、応援に力が入り選手への期待も通常のクラブチームよりは大きいものになっていることに加え、資金調達面でも他チームよりは容易な一面があるのかもしれません。
クラブトータル収入
上記に見てきたように収益構造の3ファクターがバランス良く、2014-2015シーズンのクラブトータル収入(income)は6億800万ユーロ、収益(revenue)は5億6,080万ユーロとなりました。
総収入ベースでクラブ最高額を更新(前年比+18%)していて、2010年からの利益額の合計は1億2,800万ユーロにも登り、4年連続の黒字を継続中です。
2012-2013シーズンのクラブ収入は4億8,260万ユーロですから、2年間で約2割のペースで増えていることになります。
http://www.barcablaugranes.com/2015/7/17/8987367/fc-barcelona-2014-15-financial-report-released
https://ja.wikipedia.org/wiki/FCバルセロナ
ということでバルサ資産価値は?
次にこうした各ファクターからクラブ全体の資産価値を計算します。
・クラブのトータル収入が6億800万ユーロであり、
・放映権収入、商活動、チケット販売の3セクションからの収入はほぼ同じ比率
・年間18%のペースで増加していること、
を加味して簡単なDCF(Discount Cash Flow)モデルで株価を計算するため収益成長率を株主資本コストとして18%とすると、こうしたキャッシュフローの現在価値に割り戻すために無限等比級数の和の公式を使って
560.8/0.18=約31億1,556万ユーロ
という資産価値が得られます。
http://www.ikpi.co.jp/knowledge/valuation/valuation_file034.html
かなりざっくりとした計算式と思われる方もいるかもしれませんが、アメリカの経済誌『フォーブス』が、サッカークラブ別の資産価値ランキングを発表した際に見積もった資産価格35億4,900万ドル(約3,849億円、31億4,000万ユーロ)と比べてもそこまで大きな差異はないようです。
http://www.forbes.com/teams/barcelona/
メッシの資産価値
翻って、クラブ収益の算出方法と同様にグッズ販売、放映権、チケット収入などの観点でメッシ個人による収益の算出も行います。
商業活動(スポンサー収入及びグッズ販売)への寄与
まずユニフォームなどのグッズ販売ですが、2009年にC・ロナウドがマンチェスターUからレアルマドリードに移籍した際に、1年間で150億円分のユニフォームが売れたという記録、及びその時の販売額は全選手のユニフォーム売上高及びその他商業活動に関するトータル収入の35%程度であったことを参考にします。
ただ、C・ロナウドの場合のユニフォーム販売は一過性の話題もあったことに加え、バルセロナの場合はMSN(メッシ、スアレス、ネイマール)をはじめとして、全員が各国代表のトップクラスに名を連ねるスター性の選手が多いこと、メッシよりもスアレスのほうがゴールを量産しているというマイナスファクターを考慮しつつも、メッシ自身が世界を代表するバロンドールとして選出されていることも考慮して、商業活動の15%程度であると見積もることにします。
これらを考慮した結果、2015年を参考にメッシによる商活動への寄与度は2億4,410万ユーロの15%となる3,662万ユーロとします。
放映権への影響
放映権収入についてはもちろんスター選手の多いクラブほど多いという事実はあるものの、実際にはいくらスター選手といえど、一個人の離脱、加入でクラブ収入は大きく変わりません。
リーガエスパニョーラとほぼ同じ規模であるプレミアリーグを例にすると、リーグ一括管理というシステムこそ違えどその理由が見えてきます。
まず、放映権収入としては大きく二つのプールと呼ばれる収入に分類できます。
一つがリーグ所属クラブに均等に分配される均等割りプールと呼ばれる収入で、個人の移籍や成績によって変動がないものです。
もう一つがチームの成績などに応じて割り当てが決まるプールです。
後者のプールはFacility Feesと呼ばれる視聴者数や放送回数に応じて分配金が決まるプールと、リーグ戦の成績に応じて分配金が決まるMerit Paymentプールに分けられます。
このうち、Facility Feesによって発生するクラブ間の収入格差は1%にも満たない少なさです。
リーガエスパニョーラは現状各クラブが放映権を決定するリーグが介入しない方式を採ってきましたが、2015年から徐々にクラブ間格差を少なくする方向に調整していることから、プレミアと同様、格差は是正されていきます。
またリーガエスパニョーラの他にもチャンピンズリーグ(CL)も考慮に入れてもこの現状は変わりません。
CLの放映権は勝ち数に応じて分配されることは上で述べましたが、こうした観点で個人の影響を算出するならば得点力という点でメッシよりもスアレスの方が多いという事実があるからです。
したがって、メッシ一選手の離脱などで放映権が大きく変動するということはなさそうという結論が得られます。
チケット販売への影響
チケット販売についても選手を目的とした観客は一定数いるかもしれませんが、上で述べたようにバルセロナを応援する観客の多くはカタルーニャ地方の地元民やソシオであり、彼らは選手のファンというよりクラブそのものを応援しに来ているという事実があります。
また現状のバルセロナ戦の観客数はほぼ満員状態になっていることから観客数について下方硬直性があることからも、メッシ離脱の効果は大きくなさそうです。
メッシ個人によるクラブにもたらすトータル収入
こうした3ファクターに分類した上で、メッシ個人がもたらすトータル収入は主に商活動に基づく約3,700万ユーロを始めとして、チケット販売効果と放映権効果の合計1,000万ユーロとして、年間5,000万ユーロとみなすことができます。
スター選手の契約が3〜5年程度であることを加味するとメッシが存在することによるクラブ価値は最大2億5,000万ユーロとなります。
http://number.bunshun.jp/articles/-/820873
資産価値の算定
メッシを金融商品として毎年のキャッシュフローを年収6,500万ユーロとして、株主資本コスト10%の5年間の割引現在価値を加重平均して総和をとると
6,500*Σ{(1/(1+10%)^n}=
6500*{1/1.1+1/(1.1)^2+1/(1.1)^3+1/(1.1)^4+1/(1.1)^5}=
2億4,640万ユーロとなり、ほぼ同様の値となり、そこまで大きな誤差はない計算だと思います。
バルセロナへの影響
バルセロナはレアル同様、フットボールクラブFCバルセロナ以外にもバスケ、ハンドボール、ホッケーなど他のスポーツクラブも保有しておりますが、今回はFCバルセロナのみによる資産価値をベースに算定します。
FCバルセロナの資産価格31億1,556万ユーロ(4,050億円相当)のうち、資産価値2億4,640万ユーロのメッシの寄与が剥落すると、仮にバルセロナが株式会社だったとして時価総額の8%が失われることになります。
仮に日本で4,000億円相当の時価総額企業としてはトヨタ織機(3116)などが該当しますが、仮にバルサが株式会社としてトヨタ織機同様2億株程度を発行していたとすると、株価が2,025円となります。
今回メッシの離脱によって失われる時価総額の減少率が8%なので、株価としては2,025円が162円下落して1,863円となります。
なぜ大きなインパクトにならないのか
株価が8%下落するというのは、株主としては確かに落胆でしょうが、スター選手が抜けるほどのインパクトとしては少ないように思います。
なぜそこまでインパクトが大きくないのでしょうか。
それにはバルセロナというチームの特殊性があるように思います。
バルセロナの経営戦略としては、選手補強で強いチームとなり、世界中の注目を集め、テレビ放映権による収入でさらに選手を補強していくというスタイルをとっています。
こうしたスタイルで拡大戦略を取ってきたが、足元ではメインスポンサー企業(カタール航空)との提携交渉失敗や、選手の年俸の高騰により人件費がトータル収入の適切なレンジ上限の70%を超えて73%になるなど、そして何よりもこうした人件費の高騰によって負債が増え続けていることなど不安材料は多いです。
しかし、上記の通り、各セクション別の収益を見てきたように、バルセロナというクラブチームは放映権収入、商活動、チケット販売やワールドツアーなどの収益が偏りなく、バランスよく構成されていて、この中の一選手の離脱によって大きな偏りが発生しないようになっていることがわかります。
また、ベイル擁するレアルマドリードがイングランドのEU離脱によって今後イギリス領からの選手の存続や補強が困難になった他のチームとは異なり、バルセロナはイギリス領からの選手は存在していないため、ブレグジットによる影響も軽微にとどまりそうです。
そして何よりも、カタルーニャ地方という地理的、歴史的な特殊性を基盤とした、独立精神旺盛な地元住民によるソシオを中心とした強固なファン層の獲得を背景として、スポンサー収入に大きく依存しない安定した収益基盤と経営体制を整えていることが、他のチームを寄せ付けない大きな強みになっています。
まとめ
今回、私の大好きなメッシの引退発言からバルセロナの経済的損失について算定したところ8%という軽微な影響にとどまることを確認しました。
バルセロナの収益基盤は非常に強固で、一選手の離脱によらない安定した経営基盤を構築していることがわかりました。
メッシの引退発言は非常に悲しいですが、メッシの離脱によってバルセロナの収益基盤が弱くなることはなさそうです。
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